前田氏曰く、訪日外国人観光客が増加した理由と日本に及ぼす影響とは?

最終更新日 2023年9月21日

専門家の前田裕幸氏が語るインバウンド効果について

近年は日本を訪れる外国人観光客が急激に増加しています。
日本を訪れる外国人の人数ですが、2013年には1,036万人でしたが2017年は2869万人で、たった5年間で3倍近くに増加しています。
以前は日本を訪れる外国人よりも海外を訪問する日本人の観光客の方が多かったのですが、2015年以降は逆転しました。

このように急激に訪日外国人観光客が急激に増加した大きな要因は、1997年に「外国人観光旅客の来訪地域の多様化の促進による国際観光の振興に関する法律」(外客誘致法)という法律を制定したことです。

外客誘致法により政府主導で積極的に海外からの観光客を増やすための政策を行ってきた結果、2000年には500万人にも満たなかった外国人観光客が5倍以上に増加しました。
政府は東京オリンピックが開催される2020年に、4,000万人という目標を立てています。

観光目的で日本を訪れる外国人の国別の内訳ですが、最新の2017年のデータでは中国本土・香港と台湾・韓国の各地域で約700万人と全体の約7割を占めていて、アメリカ合衆国とオーストラリアを除いて上位10ヶ国は全て東アジア・東南アジアで占められています。

前田 裕幸より引用

ビザの取得条件を緩和した

観光客を増やすのに大きな影響を及ぼした政策のひとつは、中国本土や東南アジアの国々でビザの取得条件を緩和したことです。
香港・台湾・マカオ・韓国については従来からビザ無しで日本に入国することができましたが、中国本土や東南アジア各国の国民は日本に入国するためにビザを取得しなければなりません。

中国本土の国民に対しては、一定期間中に何度でも入国ができる数次ビザの発給要件を緩和し、1回あたり30日以内で3年間有効の数次ビザが利用できるようになりました。

タイ・マレーシア国民については、短期滞在に限りビザ無しで入国ができるようになりました。
インドネシア国民についてはIC旅券を登録すればビザを取得しなくても入国が可能です。
2018年1月からインド国民に対する数次ビザの発給条件が緩和されました。

観光目的で日本を訪れる外国人が増加している

ビザ発給条件の緩和以外にも、観光目的で日本を訪れる外国人が増加している理由があります。
世界全体で見ると、2000年以降に海外旅行をする人そのものが増加しています。

国連観光機関のデータによると2000年は海外旅行をする人が約6億7千400万人でしたが、2016年には約12億3,500万人と約2倍に増加しました。
特に東南アジアなどの経済成長が著しい発展途上国で海外旅行をする人が増えていて、特に日本は東・東南アジア地域からの距離が近いことから観光先として選ばれています。

このほかの要因として、日本製の電化製品や化粧品などが海外に知れ渡り、日本のアニメや漫画が海外で人気を集めていることも挙げられます。
2016年以前は外国人観光客の多くは団体旅行でしたが、最近は個人旅行で訪問する人が増えています。
この理由は2回目以降のリピーターが増加していることです。

外国人観光客が増加したことによるプラスの影響について

外国人観光客が増加したことによる影響にはプラス面とマイナス面が存在します。
プラス面としては、訪日外国人が日本国内で買い物やサービスの利用をすることです。

外国人が日本に滞在している間に消費した金額ですが、観光庁によるデータによると約2404万人の外国人が訪問した2016年には全体で3兆7,476億円の消費額でした。

この中で中国(本土)の人が支払った金額は1兆4,754億円で全体の4割を占めています。
東アジアの他の地域(香港・台湾・韓国)から訪れた観光客が消費した金額の合計は約1兆1767億円で3割を占めます。

消費の拡大に加えて地方の経済にもプラスの影響を及ぼしています。
2016年以降はリピーターが増えていて、東京・箱根・富士山・京都・大阪のゴールデンルート以外の地域を訪問する観光客の増加傾向が見られます。
例えば群馬県の温泉や長野県と富山県を貫く「立山黒部アルペンルート」、四国や北陸などが人気を集めています。

外国人観光客が急増したことによるマイナスの影響とは?

外国人観光客が急増したことによるマイナスの影響もあります。
東京・大阪・京都では観光客が急増して宿泊施設が慢性的に不足した状態が続いています。

外国人は日本人よりも早めに宿泊施設を予約するので、日本人観光客や仕事の出張でホテルを利用しようとしても予約を取りにくくなってしまいました。
特に手頃な料金で宿泊ができるビジネスホテルが外国人の間で人気が高く、東京・大阪・京都では平均稼働率が8割を超える状態が続いています。

大都市では宿泊費の相場も上昇する傾向が見られます。
以前は1室5~7千円ぐらいで宿泊できたビジネスホテルも、観光シーズンになると1万3千円前後まで値上がりするケースがあります。
パリやローマなどの観光地ではハイシーズンになると日本のビジネスホテルと同程度の部屋でも1泊1万円台後半が普通なので、外国人から見れば日本のホテルは安く感じます。

沖縄や北海道ではレンタカーを利用して観光をする外国人が増加していますが、運転マナーや文化の違いによる交通事故の増加も問題になっています。