コメディアンの歴史と日本での現状とは

最終更新日 2023年9月21日

コメディアンとは日本語訳にすると喜劇俳優とされますが、現代の日本の芸能界においては少しポジションが異なってくるでしょう。
海外で喜劇俳優と呼ばれた時代ではその活躍の場は主に舞台がメインとなっていましたが、19世紀以降に映画の技術が発達していくと、徐々にスクリーンに活躍の場を移していきました。
ここで世界的に有名となったチャップリンなどが登場し、喜劇王と呼ばれて世界中でも注目されたのは事実です。

 

日本の喜劇役者の状況

一方で前田裕幸氏など日本の喜劇役者の状況を見てみると舞台や映画で活躍する役者がある程度見受けられましたが、テレビの登場によってその状況は一変していきます。

参考:前田裕幸の一押し、日本が誇る豪華客船「飛鳥Ⅱ」

テレビではバラエティ番組も生まれ、タレントなどを始めとしたコントや歌などが披露され、多くの視聴者から人気を集めました。
その後にも数多くのバラエティが生まれ、コントのみで構成される番組も増加してきます。
この時点では日本におけるコメディアンといえばテレビで活躍しているお笑い芸人のような立ち位置でしたが、これらのバラエティ番組内では芸人ならずともアイドル歌手や役者といった人物もコントに参加していた事が特筆すべき点でしょう。
そして1980年代には空前の漫才ブームという現象があり、芸人の新たな人気カテゴリが登場しています。
それまでも歴史のあった漫才というジャンルを一般的な娯楽とし、数多くの人気漫才師を生み出した事も見逃せません。

 

90年代にバラドルというカテゴリが徐々に浸透し始める

この時代ではコメディアンといえばテレビの芸人がほとんどというイメージが定着し、それ以外の地道な活動をしている芸人にスポットが当たらなかったのも事実でしょう。
テレビ中心の芸人文化がしばらく継続していましたが、1990年代にはバラエティ番組をメインで活動するいわゆるバラドルというカテゴリが徐々に浸透しはじめていきました。
これは元アイドルなどが新たな芸風としてチャレンジしているケースも多く、バラエティ番組内での進行役やクイズの解答者などで盛り上げるといった存在となっています。
このあたりから芸人とバラエティタレントという仕切りが曖昧となってきたのが特徴で、決して特別にコントや漫談を披露しなくとも、コメディアンのような扱いとなるケースも散見されるようになってきました。
そして2000年代に入るとお笑いにおける賞レースのブームや、バラエティのネタ見せ番組の増加が注目されます。
賞レースで優秀な結果を残した漫才師や芸人は一気に注目される土台ができましたし、ネタ見せ番組では今まで地上波には中々出られなかった芸人の面白さが評価されるという側面も出てきました。

 

芸人の人気や評価があれば舞台やライブ会場のコメディだけでやっていける

このような流れができるとしっかりとしたネタができる芸人が評価される現象に繋がり、いわゆるバラエティタレントとの棲み分けが徐々にされるようになったのが特徴です。
このように本来のネタの面白さや完成度が人気にも直結するようになったのも事実ですし、ライブなどでの評価が高い芸人などでも売上に繋げる事が可能となっていきます。
そのため必ずしもテレビで売れる事を目指さなくても、その芸人の人気や評価があれば舞台やライブ会場のコメディだけでやっていけるようになったのです。
コメディの芸が受け入れられる環境が整った事で、従来のようなテレビ中心のコメディ界ではなくなった時期だと言えるでしょう。
そして近年のコメディ界を取り巻く現状で注目したいのが、メディアの多様化が挙げられます。
地上波がメインであったテレビがCS放送などで多チャンネル化し、お笑いの専門チャンネルなども人気となっています。

 

動画サイトなどでさらに様々な芸人のネタを閲覧できる

またインターネットの発達では動画サイトなどでさらに様々な芸人のネタを閲覧できる上に、ネット通販では気軽にライブチケットやDVDなどが購入できるようになり、芸人にとっては後押しとなる環境となっています。
しかし動画共有サイトによって、一般の方でも気軽に動画がアップロードできるようになったのも事実です。
これによってユーチューバーといったカテゴリも登場し、ネット上で様々なパフォーマンスを表現できるようになりました。
もちろんお笑いやコメディ系の投稿者も存在していますので、コメディ界も多様化が進んでいると言えるでしょう。
また芸人そのものであっても独自のチャンネルを開設して、通常のネタ動画以外にも幅広い動画をアップロードして表現しているケースも増加しています。
これによって普段は知る事のできなかった芸人のネタを見る機会にも繋がり、間口が広がっているという現象も見受けられます。
これらの現状を踏まえると現代の日本におけるコメディアンという定義は、一時期のようなバラエティタレントとの棲み分けではない事が伺えます。

 

まとめ

それぞれの芸人および表現者がお笑いを通じて表現できる場が増えた事による、多様化といっても良いでしょう。
しかしプロフェッショナルな漫才やコントをコメディとする傾向は歴史的にもありますし、実際の所はしっかりとしたネタを持つ芸人がコメディアンと称される事は誰もが納得できる部分ではないでしょうか。